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動き出す時。

作成者: 寺下 真司|2019年3月5日

早いもので今年も2ヶ月がすぎ、寒い冬から日に日に暖かくなってきました。暦の上では3月5日頃からは啓蟄(けいちつ)とよばれる3番目の節気です。


啓蟄(けいちつ)

天地の気が虫や蛇、動物に春を知らせる季節。

・初候:蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく) 3月5日から10日頃
・次候:桃始笑(ももはじめてさく)3月11日から15日頃
・末候:菜虫化蝶(なむしちょうとなる)3月16日から20日頃

多くの生き物が目覚め、地中より出て太陽の光を求めて動きだします。
その生き物の正気によって、早春が賑わいを見せ始めます。

寒かった冬から日に日暖かくなることで、人々の気持ちも外に向くと思うのですが、同時に花粉症の方には辛い時期かもしれません。私自身は大丈夫と今の所思っているのですが、春は体調を崩しやすい傾向にあるので、このブログを書きながらも気をつけないと思っているところです。

 

 

さて今日は、私たちが庭づくりをさせていただく中で、特に気をつけていることをお伝えしたいと思います。
見た目のデザインも重要なのですが、同時に私たちが扱うもの、樹木や植物を始め、天然の竹を利用した竹垣、積む・張る・並べる・据える自然石など、どれもが自然界に存在する生きているものであることを忘れてはいけません。


樹木・植物の特性を知り、環境に合わせて、育つ空間を作る。

松本が日々の状況をお伝えしているこのプロジェクト。京都の中心に位置するため、材料の搬入、建築工事との工程調整などスタッフの頭を悩ませる現場でしたが、あと少しで完成いたします。オープンしましたら、ご案内をさせていただきますので、お近くに来られたら、ぜひ一度足をお運びください。

このプロジェクト、広さ100m2の庭を中心とした建築設計になっているのですが、建物そのものが10階まであるため、設計段階から頭を悩ませたプロジェクトでした。

特に気を配ったのが、日照条件です。樹木や草花が育つだけの十分な日照条件があるか。すべての樹木は光合成をして栄養を作っているのですが、すべての樹木が1日中の強い太陽の光を必要としているわけではありません。中には直接の太陽の光を必要とせず、文字が読めるほどの明るさがあれば育つといった種類もあります。この環境に合わせた素材の選別に始まり、100m2の空間の中でも日のさす時刻、時間、角度、量などを考えた配置には気をつけました。

また水も大切な要素です。自然の雨水、夜露が当たらない場所では植物は育ちません。逆に水があればいいということではなく、排水が悪く、常に水がある場所を嫌う樹木・植物があります。何事も丁度いい、適当な環境がいいのです。

 

コンセプト × デザイン × 素材の特性 × 環境

それらを考えつつ、目的とするデザイン・コンセプトに合わせて庭づくりをしています。改めて文字にするとすごく難しいことをやっているなと思ったりもしますが、一つ一つの要素のバランスをとるように気を向けることが重要なのではないでしょうか。

樹木や植物はモノ言わぬ生き物です。人は嫌なことがあったり、体調が悪いとかすると、すぐ言葉や態度にだすことで気持ちを伝えますが、樹木や植物ははっきりと言葉で伝えることができません。その内なる声に耳を傾け、その時その時に適した対応をしていくことが必要です。

私たちの仕事には正解はありません。ただどのようにすれば正解にたどり着けるのかを必死になって考えられるか、取り組められるかだと思います。

今日もあるご依頼の元、現場調査にいってきました。これからどのような計画にしていくかはまだわからないのですが、一つ一つの環境の中で、単に古くなる、荒れる空間ではなく、時間と共に深くなる空間にしていくために、日々考えていきます。