皆さん、大変です。今年のウメ・サクラの開花が異常に速いです。
日本屈指の梅園の名所で知られる水戸の偕楽園では、例年ならこの時期10%の開花量に満たないはずが、すでに50%以上のウメが開花しています。
早咲きの河津桜の名所で知られる伊豆でも、咲き始めが昨年よりも一週間早く、すでに満開の桜が見ごろを迎えているようです。
ちょっとこれはぐずぐずしてはいられません。
皆さんが今年のお花見に乗り遅れず存分に楽しんで頂くために、お花見の豆知識やウメ・サクラのことなんかを紹介していきたいと思います。
私たち日本人にとっては毎年恒例、当たり前の行事となっているお花見ですが、海外ではあまり見られない文化です。
そもそものお花見の起源は、奈良〜平安時代の貴族たちの行事に遡ります。
実は初めのころはサクラではなく、当時中国から伝来したばかりのウメを鑑賞していました。
満開のウメの下で歌を詠むのが流行り、次第にそれがサクラへと変わっていったそうです。
奈良時代につくられた万葉集ではウメを詠んだ句の方がサクラより多いのに対し、平安時代につくられた古今和歌集ではサクラの方が圧倒的に多くなったことにサクラへの変遷が見られます。
サクラは日本古来より神が宿る木として崇められ、儀式的な行事が行われていたという説もあり、より日本人の馴染みが深いものへと移っていったのかもしれません。
お花見の文化が今日まで連綿と受け継がれている背景には、四季のうつろいを大事にしたり自然を崇め敬う古来よりの日本人の心があるからなんです。
同じバラ科サクラ属の似ている様で大きく異なる2本の樹。
お花見に行った時ごっちゃにならないように簡単な見分け方を紹介します。
花の違いは、ウメの花びらは先が丸いのに対してサクラの花びらは先端が2つに割れているところがポイントです。
家紋などのシンボルでもここを注意して見ればウメかサクラか見分けることができますね!
また、花柄(かへい)と呼ばれる枝と花を繋ぐ茎の部分が、ウメはとても短く枝にくっついて咲いている様に見えますが、サクラは長くてぶら下がるように咲くのもポイントです。
なので風が吹くと、サクラの花はぶらぶらと大きく揺れます。
花以外にも葉っぱがウメの方が丸みを帯びていたり、サクラの幹には横じまの模様が入っていたりと一年中見分けることはできます。
庭木としては「サクラ切る馬鹿ウメ切らぬ馬鹿」というように、サクラは切り口が腐りやすく、樹勢が強く枝ぶりも大きく成長するため扱いが難しいです。
一方ウメは剪定に強く、色々な仕立て方が出来るため庭木として好まれます。
平安時代に書かれた日本最古の庭園書「作庭記」には、「庭には桜を植えるべし」とありますが、現代においてはちょっと難しいかもしれません。
サクラといえばソメイヨシノ。というくらい今では誰もが知っている品種です。
しかしなぜここまで有名になりえたのか、そして今街に植わっているソメイヨシノたちの寿命が近づいているということはご存知でしたか?
そもそもソメイヨシノが生まれたのは江戸〜明治時代。現代の東京、駒込のあたりにあった染井村の植木職人たちがつくり出しました。
はじめ桜の名所で名高い奈良の吉野山に因んで「ヨシノザクラ」と命名しますが、吉野山に多く自生するヤマザクラと混同される恐れがあるため、染井村の名を取りソメイヨシノとなりました。
ソメイヨシノは葉よりも先に花が開く、開花が早い、花が大きく派手、開花期が短いなどの特徴があります。
他の桜よりも一足早く咲き、葉の無い時期に咲く大きな花がよく目立ち、一斉に散る様も見事なため多くの人の心を掴んだのでしょう。
第二次世界大戦後には爆発的な勢いで街の至る所に植樹されていきました。
全国に植えられ、全ての木がほぼ同一の性質をもち一斉に開花するため今では「桜前線」を示す基準木としても知られています。
ではなぜ全ての木が同一の性質をもっているのか。それは今植えられているソメイヨシノはほぼ全てクローンだからです。
ソメイヨシノは自ら繁殖することが出来ず、人の手により一本の木から接ぎ木や挿し木によって増やされてきました。
また、病害虫に弱く短命という特徴もあり、植えられてから60年ほど経過すると樹勢が弱くなるという傾向にあるようです。
丁度今が節目の時期なので、全国のソメイヨシノが一斉に枯れてしまうのではないかと懸念され、街路樹の植え替えなどが行われています。
昨今では、ソメイヨシノの性質に近く病害虫にも強い「ジンダイアケボノ」という品種が注目され、もしかすると近い将来、桜といえばジンダイアケボノというのが当たり前になっているかもしれません。
ソメイヨシノが長生きできない理由のひとつには、お花見の客によって根が踏まれたり、幹や枝が傷つけられたりといったことや、バーベキューなどの煙も悪影響を及ぼしていると言われています。
古来より続くせっかくの素敵な日本文化なので、その本質を見誤わずに節度を守って自然に優しくできたらいいですね。
それでは皆さん、乗り遅れることないようお花見を楽しんでください!
人混みが好きでないという方は、ウメ・サクラの盆栽と共にひとり晩酌を仰ぐのもまた一興ですよ。
記事・・・飛田亮