皆さん、今年もいよいよあと一週間を残すのみとなりました。早いものですね。
そして本日はクリスマス・イブ。
去年ならクリスマスリースの記事を書いたし、ここはクリスマスに因んだ記事を書きたいところですが、そうはいきません。
なぜなら私はここ最近、門松づくりに没頭していたからです。
門松といっても普通の門松ではなく、創作門松です。
創作門松とは、基本の門松をベースに素材や形を自分なりにアレンジしてつくるオリジナルの門松で、庭師の腕の見せどころでもあります。
この一年で培った技術を、年の一番最後に門松という作品に集約し、年を跨いで新年を飾る。
これは庭師にとって一年を反省し振り返り、そして次の年へのチャレンジ精神を表明する意思表示ともいえます。
私は今回庭師になって2回目の正月を迎えるわけですが、今年からは創作門松づくりに挑戦してみようと思い立ちました。
果たしてどんな作品になるのか、私の処女作ができる過程を見て頂けたらと思い記事にしていきます。
まず、なんとなく頭の中で思い浮かべている完成形を絵にしてみます。
庭師になってからの経験を頭の中で反芻し、私は一体何を学んできたのか・・・。
まずはやはり「竹」でしょう。GardenPorterの作品で竹の花かごを作ったし、最近では一人で光悦寺垣の制作を手がけました。
門松にとってのシンボルマークである3本竹にここは凝りたいところ。そして思い切って土台を竹の花かごにアレンジします。
図の3本竹に付いてる丸い物体は苔玉です。遊びで書いたので気にしないでください(笑)
そして門松にとって欠かせない若松。ただ若松を挿していくのもいいですが、私は生け花を習っているので生け花要素を取り入れることに。
・・・などなどいろいろ考慮して、技術的には竹をひご状にして「編む」ということと、全体的には日本人の類まれなる美意識である「かわいい」と思える門松を目指すことにしました。
ちなみにこの絵を妻に見せたところ、「キモイ」と一蹴されました(爆笑)
さてさて、そんな妻に「かわいい」と言わせる門松をつくってみせる為、まずは土台の花かごから作っていきます。
以前つくった四海波花籠は、言わば手のひらサイズです。
門松にするならこの5倍の大きさは欲しいところ。
そのためには長くて太い竹ひごを作らなくてはいけません。
そしてできるだけ肉をそぎ落とし薄く剥ぐ。籠にするには強く曲げる必要があるからです。
本当にできるのか?という疑問を抱きつつも、長さ3m、幅3cmほどのひごを16本つくります。この作業が一番大変でした。
竹は円形のため、幅3cmもあるひごを作ろうと思うと中心の肉の厚みのせいで均一には薄くなりません。
そこで中心の肉だけをスプーン状の道具で抉り取る必要があり、小刀でコツコツそぎ落とした結果ひご1本につき1時間以上かかりました。
本当にできるかの保証もないのにひごをつくるだけで軽く16時間以上も費やし、これで失敗したら二度と立ち直れないかもしれません・・・。
そしたら編んでいきます。16時間以上の孤独に耐えかねついに自宅に持ち込みました。
いくら薄く剥いだとはいえ厚みがあり、かなり固いため浴槽にしばらく付けてから編みました。
これを・・・
こうして・・・
こうなって・・・
完成!
縁のひごを結ぶ所でかなり力が必要なため、一人では難しく妻と綱引きのようにしてなんとか完成。
これでもひごの長さが若干足りず、なんとか無理矢理銅線で縛って形にしました。
さて、お次は3本組竹の作成です。
細長い風船に、竹ひごを巻き付けていきます。
風船を割れば完成!ですが思ったより細い・・・。
これをそのまま立てても貧弱に見える為、もう一工夫加えることに。
三角コーンにタオルを巻いたものにひごを巻き付け・・・
合体!
私的には「かわいい」3本組竹ができあがりました!
妻に見せたところ「キモイ・・・。うさぎさん?」とのこと。
まだキモイか・・・。ん?でもまてよ。うさぎって可愛いってことじゃ?
なんとかなくかわいいに向かっているのではないかという手ごたえを感じてきました。
さて、お次は若松です。
門松と言えばどうしても3本組竹が目立ちますが、その本来の姿は松。
ここは生け花の技術を駆使して若松を目立たせてあげたいところです。
生ける器の竹筒と、7本組の若松を用意しました。
松を生ける為、竹筒に又木と言われる竹を入れ込みます。
私が習っているの流派は未生流。
三才格という決まった生け方で生けていきます。
若松を寸法で切り、美しいラインを描くようにためていきます。
「七」本の松。「五」羽の水引。「三」才格の格花。
七五三のおめでたい生け花の完成です。
これを番いでつくって飾ります。
片方は華道の先生と一緒につくったものなので、それに近づけるように生けました。
同じ寸法や曲線にためるのに苦労しました。
花かごの中に設置するとこんな感じになりました。
いよいよ大詰めです。
水をたっぷり吸わせたオアシスをセットし、
三本組竹を真ん中に設置。
ひごの先をオアシスに差し込んで固定しました。
あとは足元を松であしらえば・・・
完成です!!
足元は松だけでシンプルにいっても良かったのですが、ついつい欲が出てナンテンを生けこんでみました。
良くも悪くも通った人が振り返るような、インパクトとオリジナリティ溢れる仕上がりになったと思います。
なんとか妻からは「キモかわいい」の称号を授かったので、これで良しとしましょう。
以上、創作門松の記事でした!
この作品づくりを通して、日本人独特の美意識「かわいい」についてかなり深く考えさせられたので、そのことはまた別の記事にまとめたいと思います。
また来年の終わりには納得のいく創作門松がつくれるよう、いろんなことに挑戦し、技術を身に付けていきたいです!
記事・・・飛田亮