近江庭園のお庭トーク | お庭のプロが厳選するお庭づくり・盆栽づくりのための季節の花だより

庭師とめぐる、庭めぐり〜京都駅すぐの日本庭園・渉成園〜

作成者: GardenPorter|2017年4月15日

今回は京都の日本庭園、渉成園(しょうせいえん)を紹介していきたいと思います。

渉成園は京都駅から徒歩10分程の距離にあり、ブラリと気軽に立ち寄れるのが魅力です。

京都洛北の詩仙堂を開いた石川丈山が作庭したと伝えられる池泉回遊式庭園で、駅の近くの割には園内は広くてびっくりしました。

京都駅前の市街地の中に突如として現れる渉成園。西門が入り口となっています。

アクセスしやすい環境もあってか海外からのお客さんがたくさん訪れていました。

京都の名の通った日本庭園の多くは市外の山の近くにあるイメージが強いので、市街地にあるのも面白く感じます。

入ってすぐにあるシダレザクラ。

訪れたのは3月の下旬だったので、やっと小さな蕾が膨らみはじめたかな?という具合でした。

渉成園には、他の庭園ではあまり見られない珍しい木が植えられていました。

上の写真は入口受付前にあった鉢植えです。

緑色をした幹枝に、鋭く長いトゲが特徴です。

この木は、カラタチというミカン科の植物です。

昔はよく生垣として使われていたそうですが、今では全然目にしませんね。

カラタチは漢字で「枳殻」、キコクとも読みます。

渉成園には枳殻邸(きこくてい)という別名があり、昔はカラタチの生垣で囲まれていたことから名付けられました。

それにちなんで今でも石垣の前や駐車場の脇に植えられています。

なるほど、こんなにトゲトゲだと泥棒も入る気は失せると思います。

現代であまり見なくなったのは安全面の問題でしょうか。

間違えて生垣に突っ込んだら大ケガしてしまいますからね。

ちなみに駐車場は遊び心でいっぱいでした。

瓦を使ったモニュメントが見ていて楽しいですね。

しかし石積みに瓦を被せる発想はなかったです。なんだかかわいく感じます。

西門を入ってすぐに目の前に立ちはだかる高石垣。

石橋に使えそうな長い切石や、礎石、石臼、瓦などありとあらゆるものが詰め込まれています。

天端がガタガタだったり、前面がでこぼこして飛び出ていたりと石積みの基本を全く無視したつくりですが、見た瞬間笑ってしまうような良くも悪くも面白い石積みです。

こちらは渉成園名物・亀の甲の井戸です。

亀の甲の部分が掘り込まれていて、中心に井筒が埋められています。

亀の形の石組はわりとよく目にしますが、井戸はなかなか珍しいのではないでしょうか。

園内を流れる小川。

川底の色とりどりの小石と、水面がキラキラと輝いて綺麗でした。

カキツバタが良い感じに群生していて、咲いたらまた一段と美しくなりますね。

園内を流れる水流は琵琶湖疎水からの水が使われ、庭園の南側には印月池と呼ばれる大きな池泉が広がっています。

その印月池ですが・・・

干からびていました!

池の水が抜かれ、池の底がパリッパリに節理ってました。

それもそのはず。印月池に浮かぶ北大島にかかる侵雪橋が只今絶賛改修工事中でした。

なんとタイミングの悪い時に来てしまったのか。これではただの回遊式庭園です。

しかし、これも日本庭園における池泉の重要さに気づけたいい経験だったと自分に言い聞かせておきます。

さて、侵雪橋亡き今北大島に行くにはこの回棹廊を渡っていかなくてはなりません。

中央は唐破風屋根で檜皮葺となっている印象的な木橋ですが、作られた当初は朱塗りの欄干を持つ反橋だったようです。

北大島から印月池に向かって生える懸崖のマツ。

池があると大分見え方も違ったんでしょうね・・・。

こちらは塩釜の手水鉢。

鎌倉時代につくられたとされ、渉成園で最も重要な景物の一つです。

全国の塩釜の手水鉢の本歌で石像宝塔の塔身をくり抜いて、手水鉢として使っています。

こちらは獅子吼(ししく)と呼ばれる滝石組です。

日本庭園の滝石組といえば勢いよく流れ落ちる迫力あるものが普通ですが、湧き出る泉のような風情があります。

渉成園にはこういった地味に珍しい見どころが多いですね。

このユニークな形をした楼門づくりの建造物は傍花閣(ぼうかかく)。

周りは桜並木になっているため、春にはその名の通りお花見が出来そうですね。

裏側には蜂に注意と書かかれていました。

Be careful of the beeってちょっと面白いとおもうのは私だけ?

なにげにこの木柵、なぐり仕上げです。美しい。

モクレン

ミツバツツジ

スイセン

トサミズキ

ボケ

以上、春の息吹を感じた渉成園でした。

渉成園は地味に珍しいところを見つけるのが楽しかったです。

きっと今頃はサクラが満開で橋の改修も完了しているのでしょうか。

いつかまた池のある時に訪れてみたい日本庭園です。

記事・・・飛田亮

www.gardenporter.com