突然ですが、近頃わたくし大和言葉にはまっています。
大和言葉とは古くは和歌のことを、現在では漢語や外来語に対する日本固有の言葉を指す場合に使われることが多いです。
大和言葉の魅力は、なんといっても響きが柔らかく、美しいところ。
例をあげれば、たまゆら、たゆたう、うつつ、うるはし、しとね、まどろむ、まほろば、まほらま、などなど。
もし将来女の子が生まれたら、大和言葉で名付けたいと思うほど私は好きなのです。
最近テレビで耳にした「まほろ君」という名前も、恐らく大和言葉の「まほろば」からとったのでしょう。
巷でキラキラネームが流行っていますが、ぜひとも日本の美しい言葉にも目を向けて欲しいですね。
さて、日本に現存する最古の和歌集「万葉集」はまさに大和言葉のオンパレードです。
4500首以上が収録されていますが、その中の1500首が植物のことを詠んでいることから、自然との共生を身近に感じていたことがよくわかります。
その植物も現在呼ばれている名称ではなく、万葉集の大和言葉で詠まれており、これがまた響きが美しい。
今回は万葉の時代に詠まれた響きの美しい植物たちを紹介していきます。
初夏に可愛らしい花を咲かせる低木で、現代では様々な園芸品種が見られます。
万葉集には24首詠まれており、野鳥のホトトギスとセットで登場することが多いようです。
『卯の花の散らまく惜しみ霍公鳥野に出で山に入り来鳴き響もす』・・・作者不明
イネ科の植物の根に寄生する植物で、夏になると赤紫色の筒状花を咲かせます。
万葉集には1首だけ詠まれています。
『道の辺の尾花が下の思ひ草今さらさらに何をか思はむ』・・・作者不明
早春にピンクの可愛らしい花を俯いて咲かせる山野草です。
片栗粉の原料としても知られています。
万葉集には一首のみ登場します。
『もののふの八十娘子らが汲み乱ふ寺井の上の堅香子の花』・・・大伴家持
ヒユ科の一年草を指し、現代のケイトウに相当する植物と考えられます。
初夏から夏にかけて鶏のトサカに似た花を咲かせます。
万葉集には4首詠まれています。
『隠りには恋ひて死ぬともみ園生の韓藍の花の色に出でめやも』・・・作者不明
カブやアブラナなどの茎の立った菜のことを指していたようです。
万葉人にとっての重要な食糧でした。
万葉集には一首だけ登場します。
『上野の佐野の茎立折りはやしあれは待たむゑ今年来ずとも』・・・作者不明
ニラの仲間で、夏に白い小花を茎先にたくさん咲かせます。
古くから食用や薬用として使われてきました。
万葉集には一首だけ登場します。
『伎波都久の岡のくくみら我れ摘めど籠にも満たなふ背なと摘まさね』・・・作者不明
街路樹や庭園樹として植えられる常緑樹です。
大きいものだと30m程に成長します。
万葉集には一首だけ登場します。
『礒の上のつままを見れば根を延へて年深からし神さびにけり』・・・大伴家持
秋には2cm程の大きなドングリが実る落葉樹です。
つるばみ染めの染料として、樹皮やドングリの殻が使われてきました。
万葉集では6首が登場します。
『紅はうつろふものぞ橡のなれにし来ぬになほしかめやも』・・・大伴家持
春に白いブラシ状の小花を付ける山野草です。
つぎねはフタリシズカのことを指すという説もあります。
万葉集には一首詠まれています。
『つぎねふ山背道を人夫の馬より行くに己夫し.......(長歌)』・・・作者不明
以上、万葉集に詠まれた植物たちを紹介してきました。
たまには大和言葉や和歌に触れ、古来の日本に思いを馳せてみるのもいいですね。