私たちを取り巻く世界には数え切れない程の様々な色たちが溢れています。
それは今も昔も同じですが、明らかに現代のほうが様々な色を目にする機会が増えたのではないでしょうか。
ですがどうも我々はそれが当たり前になり過ぎて、色の細かい変化に目もくれず赤や青、暖色と寒色といったように大雑把にカテゴライズする癖がついている気がしてなりません。
古来より親しまれてきた日本の伝統色を見てみると、些細な色の違いでも異なった名前を付けているのがわかります。
その繊細な観察眼と感性についつい感服してしまいます。
味のある色合いの伝統色を眺めているだけで、現代人が置き去りにしてしまったなにかを思い出させてくれるようなそんな感覚が沸きあがってくるのです。
また、自然と共生してきた日本人ですから伝統色にも植物由来のものがたくさんあります。
そこで今回は伝統色の中でも植物に関連したものをいくつか皆さんに紹介したいと思います。
平安時代から使われてきた、春の訪れを感じさせてくれる伝統色です。
早春に地上に萌え出た若芽の色で、明るい黄緑色をしています。
若さを表す色でもあるので、若者が多くこの色を身に纏ったそうです。
似た色に「萌黄色」がありますが、これは若木の新緑の色なので若草色よりも少しだけ緑が濃いです。
シダの仲間である常緑多年草、トクサが由来の伝統色です。
トクサの茎の様な青味の強い濃い緑色をしています。
鎌倉時代以前より使われており、江戸時代の流行色だったようです。
別名「陰萌黄」とも呼ばれます。
夏に花を咲かす一年草、ツユクサが由来の伝統色です。
ツユクサの花弁の様な明るい青色をしています。
道端や畑などに生え今では雑草扱いされますが、万葉の時代から染料として使われてきました。
アカネ科の常緑低木・クチナシの花は白色ですが、古来より実が染料として使われてきた歴史があり、その色が支子色という伝統色になっています。
やや赤みがかった黄色で、普通の黄色よりも落ち着いた雰囲気があります。
別名「不言色(いわぬいろ)」とも呼ばれます。
日本で古くから栽培されてきた柑子蜜柑の色です。
蜜柑色よりも黄みの強い橙色をしています。
コウジミカンは今普通に食べられているウンシュウミカンよりも糖度が低く酸味が強いそうです。
バラ科の果樹、アンズの果実の色です。
落ち着いた橙色をしています。
アンズは古来より親しまれ、平安時代には「唐桃」と呼ばれていましたが、色名として使われるようになったのは明治時代以降なのだそうです。
カンゾウの花色が由来となった伝統色です。
カンゾウは別名「ワスレグサ」とも呼ばれ、万葉集でも詠まれています。
明るい橙色をしています。
色鮮やかな紅梅の花弁が折り重なったような色合いの伝統色です。
明るい紅色をしており、平安時代の装束に用いられました。
ザクロの果実の様な深い赤色をした伝統色です。
ザクロは平安時代に中国より渡来し、人々に親しまれてきました。
果実に種子が多いことから縁起物としてもてはやされ、色だけでなくザクロ柄も人気がありました。
スオウはインド・マレー原産のマメ科の染料植物で、日本には奈良時代に伝来しました。
ブラジリンという赤色色素を含有し、黒みがかった赤色をしています。
日本画の絵の具などにも使われた人気のある染料です。
クマツヅラ科の落葉低木・コムラサキの実が由来の伝統色です。
渋い色合いの濃い紫色をしています。
「紫式部」という伝統色もありますが、こちらは小紫よりも赤みが強い紫色をしています。
アオイの花が由来となった伝統色です。
明るい紫色をしています。
アオイにはたくさん花色がありますが、なかでも紫が平安時代から人気があったためこのいろが葵色と名付けられたそうです。
フジの花が由来となった伝統色です。
葵色よりも淡い紫色をしています。
平安時代から女性が身に纏う服に好まれて使われてきました。
榛摺とはカバノキ科の落葉高木・ハンノキの実や樹皮で染められた色のことです。
渋く深みのある橙色をしています。
万葉時代からその名が詠まれ、平安時代に書かれた「延喜式」にも記述があります。
卯の花とはウツギの花のことで、若干黄みがかった白色をしています。
代表的な白色の一つで、平安時代では卯の花が白さを表す象徴としても使われてきました。
日本の伝統色には白色にもたくさんの種類があります。
以上、日本の伝統色を紹介してきました。
日本の伝統色には本当に素晴らしい色がたくさんあるので、興味を持たれた方はぜひお気に入りの色を探してみてはいかがでしょうか。
記事・・・飛田亮