突然ですが皆さん、枝折り戸ってご存知ですか?
主に竹や木の枝を用いてつくる簡素な扉のことで、日本庭園内や露地・茶庭に設置されています。
庭において和の風情を醸し出す竹の構造物。その代表的なものといえば竹垣でしょうが、この枝折り戸も竹垣と同じくらい和の庭には欠かせない存在です。
そして竹垣同様、現代の私たちの生活の中では姿を消しているものでもあります。
手軽に安く済む塩ビ製の商品も流通していますし、今の庭師のなかでも枝折り戸をちゃんと一から自分の手で作れる職人は少ないでしょう。
でもそれじゃまずいと思うんです。
実際つくれる人間がやむを得ない理由で既成の商品で済ますのは良しとして、つくった経験のないものが既成のもので済ますのは職人の名折れでしょう。
どんどん廃れていく伝統技術。まだ微かに残り香としてある日本人としてのアイデンティティすら喪失してしまえば、私たちは世界になにを誇り語れるのでしょうか。
日本文化と自然を愛する身として、職業としてそれらに携わる身として、そんなプライドと危機意識をもって枝折り戸の作成に挑戦してみました。
まずは枝折り戸の枠の部分をつくっていきます。
使うのはこの5本の細竹。
竹と竹を組み合わせる箇所に穴を空けます。
ドリルと小刀を使って最小限の大きさの穴を空けました。
穴の大きさの微調整が難しいですが、スポッと入ると気持ちいいですね。
枠組み完成です!
次は竹を割って削いでひご状にし、編みこんでいきます。
まずは対角線でバッテンに交差する筋交いを入れます。
丈夫にするために、編み込む竹皮よりも少し厚めのものにします。
竹枠に少し切れ込みを入れ、筋交いを入れ込みました。
下の木の台は、竹枠を立てて作業しやすくする作業台です。
格子状に編み込み、シュロ縄で交差したところを結んでいけば完成です。
細かい所で失敗してしまった箇所がいくつかありますが、初めてにしてはなんとか形になったと思います。
上の写真で枝折り戸にかかっている竹の輪っかは箍(たが)。
「たがが外れる」なんて言葉がありますが、そのたがのことです。
和樽にハマっているものをよく目にしますが、枝折り戸では錠前の役割を果たします。
日本庭園の枝折り戸を見に行くと針金の輪っかやロープなどで代用していることがありますが、たがも姿を消してしまった日本文化のひとつですね。
これからも日本の伝統技術を一つ一つ覚え自分のものとし、現代の要求に合わせ昇華させる力を身につけていきたいです。
記事・・・飛田亮