先日、京都府八幡市にある松花堂庭園に行ってきたのでレポートしていきます。
松花堂庭園は江戸時代初期の僧侶で、当時の文化人たちの中心的存在でもあった松花堂昭乗(しょうじょう)にゆかりのある庭園です。
園内には様々な種類の竹や椿が植栽され、「史跡 松花堂」など文化財のみどころもたくさん。
京都には名だたる名園たちが勢揃いで、私も数々の庭を見て回ってきましたがこの松花堂庭園にはかなりの感銘を受けました。
京都市内からもそれほど遠くないので、京都観光に来た際にはぜひおすすめしたい松花堂庭園を紹介していきます。
やってきました松花堂庭園。
京都駅から車で2~30分程の距離にあります。
庭園受付の建物にはあまりみられない仕上げ方の塗り壁が。
これは短冊形が幾重に折り重なっているように見える「スパニッシュ仕上げ」です。
日本庭園にスパニッシュ。これはなかなか斬新でおもしろい試みですね。
ガッチガチの伝統文化に固執しない、ユニークな心もちの方が管理してらっしゃるようで好感度アップです。
!?
入園してすぐ目に入ってくる光景。
美しい庭園であることは間違いないのですが、それ以上に気になってやまないのが謎の竹のオブジェ。
一目散に駆け寄り、思わず感嘆の声をあげる私。
これは創作垣でしょうか。綺麗な扇形をしているので扇垣とでもいうのでしょうか。
このユニークな発想、そしてそれをこんな格式高い名勝庭園でやってしまうダイナミックさに度肝を抜かれました。
すごいぞ松花堂庭園。
照明の足元には竹を使った小洒落た工夫がなされています。
園内にはこのように様々な種類の竹垣や竹細工が庭園美をよりいっそう惹き立て楽しませてくれます。
また、ここは竹の植物園だっけ?と見紛うほどに多種多様なタケが植えられており、竹マニアにはたまらない様相を呈しています。
例えばまず最初に出迎えてくれるのがこのホウライチク。
どういうわけか根っこの塊が地表に隆起し、生命力溢れる力強い姿に。
園内にはこのようなマニア垂涎ものの竹たちが出迎えてくれるのです。
さて、入園してすぐ右手からずーっと奥まで竹林が続き、それを横目にしばらく散策していきます。
黒く照り輝き、すらーっと細い幹が美しいクロチク林。
こちらは亀甲状の節が独特な雰囲気を醸し出すキッコウチク林。
様々な種類の竹林を見ながら歩いているだけでも飽きません。
竹の結界は、竹の枝部分を切らずにうまく使ってつくられていました。
素材の良さを最大限に使うものづくりの素晴らしさを、結界一つから教わるとは思いもよりませんでした。
ここでちょっと面白いものを発見。
わかりますか?ヒントは岩の上です。
なんと岩の小さなくぼみからマツの幼木が育っているではありませんか。
初めつくりものかと思いましたが本物です。
どうやって生えたのか、なぜ元気に育っているのか不思議で仕方ありません。
園路の左手には池泉が流れ、コイが優雅に泳いでいました。
コイをいたわる様に池の中にも竹をうまく活用していたのが印象的でした。
池泉の水を逃がすオーバーフローだと思いますが、コイが万が一落ちていってしまわないように竹の柵が設けられていました。優しい。
これは何故池泉に井戸ぶたが?と思いましたが、コイの隠れ家になっていました。優しい。
ひょっこり顔を出すコイたちが可愛らしく、コイの魅力をより引き出すアイテムとしても機能していました。
奥の方まで進むと、少し雰囲気が変わって茶室が見えてきました。
茶室の前にちょっと苔タイム。
庭園茶室「梅隠」。
茶室の前ではウメの花がちらほらと咲いていました。
茶室の袖垣には、萩の枝でつくられた光悦寺垣。
下地は丁寧に竹でつくられていて感動。
組子の結びにはシュロ縄ではなくツルが使われていました。
洋風の庭にも合いそうなナチュラルな垣根です。
茶室の周りにはツバキや、
アセビなどの花木が植えられています。
アセビは紅白で並んで植えられていました。
綺麗に苔むした手水鉢。
実は水琴窟になっており、地面に刺さった竹筒に耳を傾けると水滴の音が響きます。
一滴の水音で大海を、森羅万象を想起させるまことに日本的な仕掛けですね。
枯山水もそうですが、私たちの自然を求めてやまない根源的欲求が庭園においても水の要素を欲するのは必然だったでしょう。
しかしそれをここまで美的に表現した先代の発想に感服しますし、同時に現代の庭師としての焦りも覚えます。
茶室の裏手には丁寧につくられた建仁寺垣や竹穂垣がありました。
あまり人目の付きそうのないところでもぬかりない仕事ぶり。
延べ段も美しくつくられていました。
かなり裏手にあったタラヨウの木。
タラヨウの葉裏を強くなぞると変色し文字が書けるので「ハガキ」の語源となった木とも言われています。
こんな裏手まで散策に来るのはなかなかの庭園好き、植物好きだからでしょうか、葉っぱにはメッセージがたくさん書かれていました。
しかし、中には普通にペンで書いてあるものもあっておもしろかったです。
続きはまた来週、後編にてお送りします。
記事・・・飛田亮