近江庭園のお庭トーク | お庭のプロが厳選するお庭づくり・盆栽づくりのための季節の花だより

庭師とめぐる庭めぐり~竹と椿の名勝・松花堂庭園【後編】~

作成者: 亮飛田|2018年3月17日

前回に引き続き、京都府八幡市にある松花堂庭園をレポートしていきます。

松花堂庭園に行ってみた【後編】

梅隠につづき2つ目の庭園茶室「松隠」です。

梅隠よりも格式高い感じがしました。

松隠の前にある蹲踞の周りには背の高いダイスギがたくさん植わっていました。

ダイスギの歴史は室町時代にまで遡り、京都・北山で生まれました。

関東育ちの私としては初めてダイスギを目にしたときはこんなスギもあるのかと衝撃を受けたものですが、京都の庭には欠かせない存在です。

そばにはちょっとした梅園があり、紅白のウメがきれいに咲いていました。

しかし、梅園の中に一本だけ気になる存在が・・・。

素知らぬ顔で「ウメモドキ」が紛れ込んでいました。

ウメモドキはウメとは違いモチノキ科の植物で、葉や花の形がウメに似ていることから名付けられたとされています。

ウメの中にウメモドキを植えたユーモアに感服です。

年季の入った枝折り戸。

先日枝折り戸の作成に挑戦したばかりだったので、自然と注目してしまいます。

朽ちかけでも充分風情がありました。

錠前の箍(たが)はツルを編んでつくられていました。

編み方が少し難しいため竹でつくっているところは少なくなっていると聞いたことがありますが、本当なのかもしれません。

3つ目の庭園茶室「竹隠」です。庭園茶室は園内に3つ、「松竹梅」でおめでたいですね。

竹隠の周りにはその名の通り様々な種類のタケやササが植えられています。

なかでも竹の中で最も美しいとされる「キンメイモウソウチク」が植わっていて驚きました。

モウソウチクの突然変異で、西日本に数か所しか発見されていない希少な種です。

綺麗なものだと金色と緑色の市松模様を描くといわれています。

寒竹あやめ垣。

萩小松明垣。

萩穂垣。

袖垣の種類も豊富で、見ていて飽きません。

茶室の入り口には竹の節を用いて優美な連峰が描かれていました。

こういうのを見たときに、日本文化の素晴らしさを実感します。

ホウオウチクの生垣。

ホウオウチクはガーデンポーターでも商品として扱っていますが、生垣になっているものは初めて目にしました。

奥の背の低い竹垣は金閣寺垣です。

少し進んだところにある芝生広場には、大きなシダレザクラがありました。

満開の時期にもう一度来てみたいものですね。

足元には面白い竹垣があるのも注目です。

光悦寺垣に似た竹垣で、2つ並んでいるからか看板には「双竜垣」と書かれていました。

カーブの美しさが引き立つ竹垣で、思わず間を通りたくなりますね。ちなみに奥はトイレです。

園内には竹でつくられた案内がいくつもあり、ぶら下げたものが風で飛ばないよう小枝を刺すなど工夫してありました。

こういう細かなところにもセンスが光ります。

椿園に向かう途中、桂離宮で有名な桂垣がありましたが、看板には「昭乗垣」と書いてありました。

どうやら竹穂の並べ方が松花堂庭園オリジナルのものだそうです。

こちらが椿園。

まだちょっとだけ時期が早かったのですが、いくつか咲いていて十分楽しめました。

中には一見ツバキには思えない珍しい品種のものもありました。

草庵茶室・松花堂のある内園に進んでいきます。

薄べったい変わった形の石灯を発見しました。思わず顔がほころびます。

藤棚かと思いきや、絡んでいるのはフジではなくムベでした。

竹垣に使われていたツルも、もしかしたらフジではなくムベのツルかもしれませんね。

こちらが草庵茶室・松花堂。

竹の網代張り天井に描かれた太陽と鳳凰が印象的でした。

松花堂の前にはナギが数本植わっていました。

日本庭園で目にするのは珍しく、庭木仕立てになっていたのが新鮮でした。

ちなみに松花堂の躙り口の側には可愛らしいハート形の窓があります。

実はこれ、ハートではなく「猪目(いのめ)」という伝統的な文様なんです。

時折神社やお寺でも目にすることがありますが、魔除けの意味が込められているそうです。

 

以上、松花堂庭園を紹介してきました。

行った後から知ったのですが、松花堂庭園では毎年春につばき展なるものを開催しているようで、その期間は園内が美しい椿や竹細工で装飾されるそうです。

今年2018年のつばき展は3/30~4/1なので、気になった方はこの期間に訪れることをおすすめします。

すっかり松花堂庭園のファンになってしまった私もつばき展を見に再度赴く予定ですので、またその時は記事にしたいと思います。

ちなみに庭園の隣にある松花堂美術館では、きれいな昭乗垣をじっくりとみることができるのでおすすめです。

記事・・・飛田亮