先日、弊社にて行われた石組研修の様子をお伝えしていきます。
石組み庭園の舞台となるのは、弊社の土場の一画。
我らが親方、会長の頭にある自然味溢れる風景の一コマが果たしてどんな形でこの土場に体現されていくのか。
会長の手となり足となり動く私たちに過る一抹の不安と責任感。
そしてそれらをはるかに上回る期待と喜びを感じながら、ひたすら土場を整地していきます。
今回の研修に参加していただいたのは15名程の方々。皆で整地したのであっという間にきれいになりました!
会長が今朝数十分で描いたという、風流な一大絵巻物と見紛う図面をみながら、会長自ら景石や流れの形をマーキングしています。
どうやら大まかに滝石組と流れ、蹲踞をつくるみたいです。
ピンクのマーキングは盛り土する箇所。
中央の流れの部分を深く掘り下げ、出た土で周りにいくつか築山をつくっていきます。
さあ、ここからユンボのターン!
ユンボで流れの部分を掘り進めていきます。
掘るものと築山を成形するものとで分かれて作業。
土が濡れているのは、土が乾いていると扱いずらいので濡らして固めやすくしています。
だんだんと庭の地形ができてきて、その全貌が明るみになってきました。
土のアンジュレーションだけでこれ程までに場の動きが出せるものなのかと感心してしまいました。
ある程度地形ができたところで、いよいよ石を据えていきます。
まずはこの庭の主役といっても過言ではない滝石組からです。
ユンボの動線の関係で、予定とは異なる場所に滝石組をつくることになりました。
想定外の事象をものともしない臨機応変な柔軟な判断は、底知れない経験値から導き出されたものでしょう。さすが会長です。
倒れそうで倒れない、動きのある石組が滝石組のポイントなのだそう。
金八先生じゃないですけど、「人」の字の様に石と石とが重ね合わさる点の力の均衡が、この滝石組からはじりじりと力強く感じられます。
よく石の向きや形が空間に作用する力を「気勢」といいますが、このじりじりとした芯を揺さぶる地響きのような力は「気響」とでもいえましょうか。
楽器で例えるなら気勢がギターで、気響がベース。
この2つの音色が奏でる心地いいハーモニーが、会長の石組の真骨頂だと私は勝手に思っています。
ある程度滝石組ができたところで、次はつくばいをつくっていきます。
つくばいはつくばいでも、流れのつくばいです。
水の流れの中に手水鉢があることを想定して石を据えていきます。
つくばいは庭の中でも実用性の高いところなので、実際に屈んで使いやすい位置に据え付けます。
また、手水鉢の中に実際水を入れ、水の溢れる向きを微調整していきます。
手燭石と湯桶石も据え付け、流れ蹲踞の完成です。
中くらいの石を3つ合わせていますが、これは灯籠を据え付ける土台です。
飛び石も着々と据えられていき、岬灯籠も置かれました。
岬灯籠は桂離宮にあるものが有名で、池を海に、岬灯籠は海を照らす灯台に見立てられて据えられています。
滝石組の周りにも景石が据えられ、更に迫力のある石組になっていきます。
最後に切石を据え、仕上げに全体を慣らして完成です。
切石を据えたことでアクセントになり、より自然石の野趣感や石組の力が強まりました。
最初の写真の土場とはまるで見違えるよう。同じ空間とは到底思えません。
会長の底知れない凄さを垣間見ることができ、自ずから恐悦至極の域に達っすることを禁じ得ませんでした。
今回の研修で学んだことは大きく3つ。
まずは土の効果的な使い方。
庭づくりにおいて土盛りが最も安価でありながらダイナミックな演出ができることを身をもって知りました。
そして今回の目玉、景石や石組の据え方。
状況や目的によって据え方は異なり、中でも動きのある石組について学ぶことができました。
そして思想的な面では、近ごろ考えていた日本庭園における石の重要性についての答えを導き出してくれました。
日本庭園の3大要素とは木、水、石だといわれますが、木や植物だけ植えてあってもそれは樹木園や花壇に他ならないし、水だけが流れていてもそれはビオトープや噴水で日本庭園ではありません。
しかし、石や土さえあれば日本庭園はつくれてしまう。
というかそれこそが日本庭園の特色だということは石以外を排した枯山水の庭で歴史が証明していますね。
石とは日本庭園の中核をなす骨格であり、石が無ければ日本庭園とはいえないとまでいえるでしょう。
日本庭園の伝統は石と共にある。それはこれから先どんな庭がつくられようとも変わることのない鉄の掟ならぬ石の掟なのだと思います。
以上、石組講習の様子をお伝えしました。
弘匠塾、まだまだ塾生募集中ですので気になった方はぜひ近江庭園までご連絡くださいませ。
記事・・・飛田亮