近江庭園のお庭トーク | お庭づくりに技術と情熱を込める庭職人のストーリー

お盆休みの思い出・塩田千春展

作成者: 松本 友香里|2019年8月15日

こんにちは。

皆様お盆休みはいかがお過ごしでしょうか?もう仕事に行っていますよ、という方もいらっしゃるかとは思いますが、皆様思い思いの休日を過ごされていたら良いなと思います。

こちらは高速で過ぎてゆく富士山です。新幹線の車窓から富士山を見るのが帰省時の楽しみなのですが、雲行きが怪しいのは台風のせいでしょうか?現在西日本には台風が上陸しております。強い風と雨が予想されますので、皆様十分にご注意くださいませ。

青田風のように爽やかな風なら歓迎なのですが…

 

塩田千春展・魂がふるえる

今回はお庭の話ではありません。私がお盆休みの間に行った美術展についてです。

以前、私は大阪の国立国際美術館で行われていた「クリスチャン・ボルタンスキー/Lifetime」を鑑賞しに行きました。塩田千春さんの作品と出会ったのはその時です。クリスチャン・ボルタンスキーは2016年の庭園美術館での個展以来、ずっと好きなアーティストで、その時はボルタンスキーだけを目当てに美術館へと行ったのですが、そこで開催されていたもう一つの展覧会で塩田さんの作品を見た衝撃がずっと残っており、このお盆休みの期間中に森美術館で個展が開催されると知った私は、絶対に行かねばならないという気持ちで埼玉に帰りました。もともと哲学や宗教学、そして美術などを大学で専攻していた為、こういった展覧会が大好きな私です。

 

そして、行ってきました。

思わず息を飲むようなインスタレーションの数々。歩きながら部屋を周り、どんどん胸が詰まる思いがしました。アイデンティティ、境界、存在といった普遍的な概念を問う作品の中で、塩田さん自身もその問いに立ち向かい不安や記憶という不確かなものに心を萎めていたこともあったのかもしれません。

展覧会のタイトルでもある「魂がふるえる」。塩田さんの作品には塩田さん自身の魂の在り処を探す過程、藻掻き、様々な思いが伝わってきました。

自分の存在や他人の存在、夢や記憶、「不在の中の存在」をテーマに作品を作ってきた彼女の思いが少しでも私の思いを震わせていたなら、私はこの展覧会を訪れたことでまた一つ尊い経験が出来たのだと思います。作品に圧倒されてしまい、まだ自分の見たものの整理があまり出来ていないのが現状ですが。

展示最終の場面で小さな子供達に「魂ってなんだと思う?」という問いかけをした映像作品が流れていました。小さな子供達は自分の考える魂の話をし、他の子の話に耳を傾け、真剣に議論していました。魂の色、魂の変化、そういった普段人とは話さないような議題を話すことはおそらく大人には難しく、子供の純粋な心で語るからこそ、それぞれの話が真実を語っているように聞こえてくるんでしょう。魂の存在という不確かな存在を語る時、私たちは確かに魂を考え、そこに考える自分が存在しているということになります。とても興味深いです。

とても文章では書き足りない気持ちですが、やはり実際に見て感じてもらうのが一番です。この気持ちを文字に起こそうと思ったら、とてもエネルギーを消費しそうな気がします。そして残念ながら写真では実物の圧倒的なパワーと空間に飲まれる感覚が全く伝わりません…。

ぜひ皆様、機会のある方は森美術館に!

お庭や植物の話ではなかったので退屈させてしまったかもしれませんが、たまにはこういった閑話休題もお楽しみ頂けたら幸いです。