近江庭園のお庭トーク | お庭づくりに技術と情熱を込める庭職人のストーリー

より美しいお庭を造っていくこと

作成者: 松本 友香里|2019年3月7日

こんにちは。

日差しが柔らかく、会社の白壁に映る木漏れ日が美しいです。麗らかな日があるかと思えば、お天気が崩れる日もあり、仕事があまり捗らないこともあります。ですが、この時期の雨は邪険にされるものでも無く、植物にとっては恵みの雨です。

催花雨(さいかう)、木の芽雨(このめあめ)というように、この季節の雨は花や木の芽を育むために大切な雨です。催花雨は二月下旬ごろに降る花が咲くために降る雨、木の芽雨は新芽の出始める頃に降る雨のことをそう呼びます。雨にも状況や季節によって色んな名前があることを知ると、雨の日でも少し穏やかな気持ちになれると思います。

 

さて、雨の話はここまでにして、今進めているお庭の工事の話をさせて頂こうと思います。

前回は植栽が入り、だいぶお庭に動きが出てきたとお話しさせて頂いたかと思います。

今回は更に苔と砂利が追加され、いよいよ中庭は完成に近い様相になって参りました。

この苔張り作業の日も小雨が降りしきっておりましたが、濡れたお庭が放つ艶々とした美しさは晴れの日に臨むのとは違った風情がありとても良いですね。苔が入ったことにより、お庭の緑が一層濃く鮮明になりました。まだ完成ではないので、資材が手前に置いてあり、写真として残念な部分もありますが、雰囲気を少しでも感じ取っていただけたら幸いです。

 

またこちらの中庭と並行して、北側のお庭ももうすぐ完成を迎えます。

こちらは細長い窓から見える小さなお庭ですが、小さな空間だからこそ、見せ方次第で如何様にも広がりを見せることができます。小さなお庭にこそ、職人やデザインの技量が試されるような気がするのです。

 

色んな関係で石積みが少し埋もれていますが、やはりここに石積みがあることで空間が引き締まって見えますね。お庭の真ん中の小石で造られた川は中庭に造られている川に注いでゆくイメージで、建物の三方に別れたお庭ですが、連続性と物語性を思い起こさせるようなつくりをしています。このような細部へのこだわりがお庭造りには欠かせません。

造りながら思うのは、時間が経つにつれより自然に、より美しくなるお庭を心がけていかなければならないということ。今は植栽や石も新しく綺麗ですが、造りたてが綺麗なのは当たり前ですし、場に馴染んでいるかというとまだ「新しいお庭」です。ここからこのお庭が何年先も愛されていくものに育てていくのも私たちの仕事ですね。そのことを頭に置きながら造っていきたいと思います。

 

いよいよ残すところあと東のお庭の作庭のみです。どうぞ完成の瞬間までお付き合いくださいませ。