近江庭園のお庭トーク | お庭づくりに技術と情熱を込める庭職人のストーリー

小端積みのみせ方

作成者: 松本 友香里|2021年5月16日

こんにちは。

新緑の葉の中でもドウダンツツジの緑の透き通った色はとても美しいと思います。事務所の前にあるドウダンツツジは日当たりが悪いせいか花付きがあまり良くないのと紅葉もあまりしないのですが、緑の美しさは抜群です。ドウダンツツジというと、生垣になり刈込になっているものをよく見ますが、本来はこのような自然の樹形が美しいのですよね。

 

表情のある石積み

GW明けから再び工事が始まり、休暇前の作業の続きを進めています。こちらの現場も少しずつですが、確実に丁寧に形になってきました。

元々のお庭にあった古御影を使用した板石の園路の脇に、諏訪鉄平石を使用した小端積みをして植栽のスペースをつくっています。既にエイジングされているような錆色の風合いがお庭の中にあると昔からそこにお庭があったかのような雰囲気を醸し出すことができます。

緩やかな曲線を描いた石積みにすることで硬質な印象を与えがちな石積みが少し柔らかい表情になります。諏訪鉄平石というと昭和の日本家屋の門柱などに使用されているようなイメージですが、積み方とデザインでアンティークな仕上がりになり、洋館のような建築にもマッチする石積みになっています。

上のお庭の石積みは野面積みという積み方で小端積みとは異なりますが、石の間からシダ植物などが自然と生え、自然の中に一体化しています。こちらの石積みを積んだ当時はこのように植物が石の隙間から生えていたわけでは無いのですが、時間と共にそこにある自然の零れ種が成長していきました。

小端積みの写真の中で、ところどころ石積みに穴が開いているのがお判りいただけますでしょうか?あえて空間をあけ、そこにシダなどを植栽する予定です。自然の植物がそこから生えてきているように見せることを狙っています。本来ならば私たちが用意した植物ではなく、どこからかやってきた植物の方が良いのでしょうが、エイジングを演出するのもひとつのお庭づくりの手法であると思います。

植物が入ることで石積みはより一層美しさが引き立ちます。自然界の硬いもの、柔らかいもの、それぞれがうまく合わさっていくように私たちはバランスを見ながらお庭をつくっていきます。

こちらの現場も折り返し地点に差し掛かってきました。まだしなければならないことが沢山ありますが、着実に出来上がっていくのが楽しみです。