こんにちは。
すっかり朝晩は秋の空気です。雲の流れや日の落ちる時間の早さを感じて季節の移ろいを思います。真夏は少しお庭に出ているだけでよく蚊に刺されていましたが、最近では蚊の数も減り刺されなくなってきました。それでもまだ残っている季節外れの蚊を「残る蚊/別れ蚊」などと呼ぶ呼び名が多く残っているそうです。嫌われ者の蚊ですが、季節が過ぎると居なくなってしまう切ない存在なのかもしれません。
先週もお天気が優れない日が続き、外で仕事をしている私たちは作業のしづらい天候にやきもきしておりました。会社のお庭のウメモドキに雨粒が滴り、綺麗な風景も見られるのですが事務所で作業をしている私も毎日の曇天模様は少し気が重くなるような心地がしていました。
そんなある時、弊社の会長が「松本くん、庭を見てお昼ご飯を食べよう。晴れてきたぞ」と事務所にやってきた日がありました。
木漏れ日が差して苔が光り輝いています。このお庭をつくった当時は杉苔を植栽していたらしいのですが、いつしか杉苔が地苔に覆われ、今ではこのお庭の環境に合う苔が地面を覆っています。元々お庭の流れの中心には細かな砂利が敷かれていたのですが、その砂利の上にも苔が生え、薄萌葱色の空間が出来上がりました。
大きな剪定はせず、自然な姿の木を育てることを意識してこのお庭を守り続けて50年。会長はお昼を食べながら「枯れ枝も自然な形で綺麗だね」と仰られていました。新しく生える枝もあれば、勿論枯れる枝もあります。当たり前のことですが、枯れていくものに対しても等しく美しいと思える感性は私の中にももっと培われて欲しい部分だと感じます。冬枯の樹木の美しさに気が付いたのもまだ最近です。
手をかけすぎず育てたというこのお庭。会長は「切るだけが造園屋さんの能じゃない」と言います。近江庭園の熟練のスタッフも「いかに木に負担をかけず、その木にとって自然な形に整えていけるかが大切」と言います。過度に手をかけることはかえって自然な姿を阻害し、お庭本来の美しさを損なうことがあるというのも私たちは念頭に置いておかなけれななりません。
たまに会長とお話をすることで普段気が付かないことや改めて考え直すことが見えるようです。自分の中の気づきを育てていけるように常に考える庭師になっていこうと思います。