こんにちは。
打ち合わせの道すがらとても良い景色に出会い、思わず立ち止まってしまいました。琵琶湖が一望でき、辺りの田畑が風に揺られて微かな音を立てていました。立ち止まっていたのはほんの一瞬でしたが、その一瞬がとても贅沢に感じられたのは秋の空気を独り占めにしていたような気分だったからでしょう。
日本では古くから住居には土壁が使用されてきました。今ではあまり見かけなくなってしまったかもしれませんが、その風合いや日本の気候に合った調湿効果、またその土地の土を使えるという良い面も沢山持っています。土の持つ素朴なあたたかさになんだか心地よさと安心感を感じますよね。
そんな土壁を造る技術を学ぶために、築地塀を造る講習会に行ってきました。
全二日間の工程でしたが、私が参加できたのは一日だけでした。
一日目で土を塗るための躯体を作り、下地まで作ってありました。この段階でもだいぶ良い雰囲気のものができていると思ったのですが、ここから更に仕上げに向けて作業をしていきます。
まずは笠木の瓦と棟木の部分に墨汁などを混ぜ合わせた塗料を塗り、時間の経過を感じる風合いになるよう真新しさを薄くしていきます。
少しの手間で、時間の経過を感じさせるような風合いに近づいています。こういった自然素材の場合、経年変化は美しく感じられ、季節と共に生活することを大切にしてきた私たちの感性に響いてくるようです。
築地塀の場合、整然とした無駄のない外構の壁とは異なり、遊びがあり素朴なあたたかみを感じる仕上がりになっていきます。どちらを好むのかは人次第ですが、こういった技術に触れるとお庭の更なる可能性を感じてとても楽しくなってきますね。
笠木部分の準備を終えたら、壁に粘土を塗っていく作業に入ります。粘土に藁と砂を混ぜ、足で踏みながら混ぜ合わせていきます。すると次第に粘土が水分を含んでツヤツヤとしてきて、柔らかくなっていきます。
普段使っているモルタルとは全く異なり、粘度も重さも力の入れ加減も初めての感覚でした。幼い頃にしていた泥遊びのような楽しさもあり、懐かしい気持ちになった作業中です。
これで完成かな?と思いきや、これで終わりではなく、ここから洗い出しをしていきます。その際にモミジの葉を壁につけたり、少し大きめな砂利を壁に投げて模様を描いたり、職人の皆さんの遊び心が表れてい流のも面白いところです。
洗っていくとどんどん藁や砂の模様が浮き出てきてざらついた自然の味が出てきました。後から写真を見返していると、やはり自然素材のあたたかみはとても良いなと思いました。
お庭の一角に造った築地塀ですが、見事にその場に調和し、アクセントにもなっていますよね。空間を仕切るための塀としての役割もあればお庭の雰囲気をガラリと変える構造物としての役割もあり、今回の講習で更にお庭の可能性を探り見ることができました。
沢山の技術を学ぶことで私たちの手がけるお庭もどんどん進化していけるよう技術を吸収する手を止めてはいけないのですね。
とても楽しく勉強になった講習会でした!