近江庭園のお庭トーク | お庭づくりに技術と情熱を込める庭職人のストーリー

月映えの庭

作成者: 松本 友香里|2019年9月8日

こんにちは。

仲秋の名月がそろそろ見られる頃ですね。数多くある月にまつわる言葉の中に「月映え」という言葉があります。これは月の光に照らされてより一層美しく見えることを差す言葉です。

かつて慈照寺(銀閣寺)を建立した足利義政も大層月が好きだったとか。お庭の池には月が映り込み、月見をするには絶好の場所、慈照寺は月見の為に建てられた建物だと言われるほどです。当時銀閣寺の壁は白土とミョウバンが重ね塗りされており、光に当たると優しく輝いて見えたそうです。灯りもなかった夜は、月に照らされた慈照寺はまさに銀閣の名にふさわしくさぞ美しかったのでしょうね。義政は月映えを全力で楽しんでいた人物だったんですね。

インスタ映えばかりが持て囃される昨今ですが、月映えのお庭も見てみたいです。月の光を存分に浴びて静かに夜が明けるのを待つ草木を眺めながら、秋の夜長を楽しむことが出来たら本当に贅沢ですよね。

 

お庭映え

近江庭園のお庭もいつどんな時に見て頂いても「映え」る仕上がりになっていると良いなと思いながら施工にあたっています。冬枯れの季節も、夏の緑が濃い季節も、どんな季節もそのお庭を形作る風景になっていくのが理想のお庭です。

現在施工中のこちらのお庭も将来、そんな風にお施主様に感じていただけるお庭になったら良いな、と施工が進むにつれて思いが強くなっていきます。

園路の石畳部分の目地が綺麗になるようにしています。数センチ、数ミリの微調整なのですが、これをするのとしないのとでは見た目がかなり違ってきます。

こちらの階段横の石積みも土で埋まってしまってほぼ見えないのですが、見えないところにも技を光らせていくことが職人の本質だと思います。全ては良いお庭造りのために。

この部分に石積みがあるのとないのではお庭の締まり具合が違います。空間が仕切られることでメリハリが生まれますよね。そういったことも考えながらお庭全体の設計・施工を進めていくのは大変な作業ですが、絶対に良いものができるので、細部にこそ気を遣うことはとても重要なんですね。

これも「映える庭」への一歩でしょうか。

美しいお庭を造りたいという気持ちはどの職人にも共通です。こちらのお庭もどんどん形を変えていき、次第に全体像が見えてきました。どんな季節でもその風景を楽しんでいただけるお庭になるよう、これからも丁寧に造り上げていきたいと思います。

「~映え」が持て囃される昨今ですが、普遍的な美しさにこそ本当の「映える(はえる)」景色があるのでしょうね。せっかく月が綺麗な季節ですので、このお庭の夜の姿も想像しながら、色んな表情を見せてくれるお庭になるように願って作業をしていきたいなと思います。

皆様もぜひ「月映え」の風景を探してみてくださいね。