こんにちは。
会社のお庭のそこかしこで萩の花が咲いています。薄桃色の花が可愛らしいですよね。「萩」という漢字は中国から来たものではなく日本人が考えた国字です。萩はそれだけ日本の秋を代表する植物だったということでしょうね。
春に作られたお餅は「牡丹餅(ぼたもち)」、秋は「お萩」。季節で呼び方が変化するのが何とも四季を大切にしている日本人らしいですよね。
先週はいつもお手入れに入らせて頂いている、あるお茶室のお庭のお手入れに行きました。ここ最近工事続きだったのですが、お手入れはお庭工事とは違う気の入り方がありますね。
今回は苔の張替えとお庭の剪定・掃除、茶事に向けてのお庭の準備を行いました。
このお庭に根付き自力で育っている苔もあるのですが、中々環境を整えるのが難しいお庭なので、苔や植物たちにとってどんな環境を整えてあげたら良いのか常に試行錯誤のお庭です。京都のお家の構造に多く見られる間口が狭くて奥行きが長い建物の場合、中庭には非常に空気がこもりやすく、どうしても蒸れてしまったり日が当たらなかったりと植物には少々過酷な環境のことが多いです。
綺麗に枝を広げているモミジがささやかな木漏れ日を生んでいます。
剪定を終えた樹木はすっきりとして、余計な枝葉がなくなった分のびのびとしているように見えますよね。
張りたての苔の上に朝日が眩しいです。お庭の調子の悪い部分が改善されたので、お庭も整い茶事に向けて粛々と出番を待っているようでした。かつての茶人たちは茶庭に深山幽谷の景を見出し俗世と離れた世界観を茶道の中で表現していました。
現在の私たちの周りには生活の音、車の音、静寂を感じる空間は中々ありませんよね。ですが、こちらのお庭は少し足を踏み入れると、すっと音が遠退き気持ちが整っていくような心持ちになるのです。
棗の手水鉢も綺麗に洗い、筧から水がゆっくり落ちてくる音が次第に意識をお茶に集中させていくのでしょう。
私もたまには仕事も生活も全部忘れてひねもすのたり、と過ごしたいですね。茶事は決してのたりのたりとしている訳ではないのですけど。
何よりこんな秋晴れの何もかも整った日に、私たちが整えたお庭が少しでも茶事の中で活躍できることがとても気持ち良いです。工事している時とは違う仕事の楽しみを久しぶりに感じた日でした。