突然ですが皆さん、滋賀県といえば何を思い浮かべますか?
言わずもがな「琵琶湖」と口にする方が大多数だとは思いますが、少し通の人や県民は「バームクーヘン」と口にする方がなかなか多いです。
私も滋賀県民になってから初めて知ったのですが、そのバームクーヘンで有名なお店を訪ねたところ想像以上の美味しさに「なるほど・・・」と感心してしまいました。
そのお店の名は「クラブハリエ」。
クラブハリエは「たねやグループ」の洋菓子部門の店舗で、和菓子部門の「たねや」と共に滋賀県を中心に数々の店舗を構えています。
その滋賀県を代表するお菓子会社・たねやグループが去年にオープンさせたのが今回紹介する「ラ コリーナ近江八幡」です。
自然あふれる広大な敷地の中にたねや・クラブハリエのショップは勿論のこと、カフェやパン屋、カステラショップなどの専門店、農園や菜園、水田、はたまた山野草園なんかも展開していて、さながら大自然とお菓子のテーマパークのようです。
さらには敷地内に本社を移転するほどの力の入れようで、なぜこんなにまでするのか、とんでもない思想犯ぶりがうかがえ私はとても興味を抱いてしまいました。
ひとまずバックボーンはさておき、まずは実際に行ってみた体験レポートを書いていきます。
ラ コリーナ近江八幡に行ってみた
ラ コリーナ近江八幡は琵琶湖の東側の近江八幡市にあります。
山々と湖に囲まれた自然豊かな風景を目に車を走らせていると突如見えてくるのがこのゲート。
「La Collina」の文字が入ったおしゃれなゲート
思わずくぐってみたくなるおしゃれなゲート。こちらは歩行者用です。
ちなみに「La Collina」とはイタリア語で「丘」という意味。
こちらは車両用のゲート。
竹の山割りを丸く曲げて、おもしろい形のデザインとなっています。
京都でよく目にする犬矢来を想起させますが、がっちりとした「和!」という感じではなく丸みを帯びているせいか隣の洋風のゲートや周りの山々と非常によくマッチしています。
和洋のデザインとそれらを包み込む雄大な自然。
この入り口は、まさにたねやグループの本質を現しているといえましょう。
駐車場からメインショップへ通じるアラカシのアーチ
まず入って驚いたのが、駐車場の広さです。
約400台が駐車できるスペースの中には大型バスも駐車可能です。
とにかくたくさんの人に来て欲しいという熱意が伝わってきます。
ユニークなデザインのメインショップ
アラカシのアーチをくぐると、メインショップが見えてきます。
なんといっても青々とした草屋根が特徴的なメインショップ。
遠くから眺めているだけでのどかな気持ちになりますね。
グランドカバーにはたくさんのオカメザサが使われていました。
このササを目にしたとききれいだなあと思ったのもそうですが、まず最初に植えるの大変だったろうなぁと思ってしまったのは職業病かもしれません(笑)
以前つくらせて頂いたお庭
我が社でもササをグラウンドカバーに使うことはよくあり、上の写真ではコグマザサを植えました。
ササを植えるとのどかで親しみやすい風景になるというか、心落ち着く和みの空間になります。
ラ コリーナ近江八幡に話を戻しまして、足元はこんな感じになっています。
景観に合わせ自然味あふれる三和土風の、粗い刷毛仕上げです。
細かい藁が練り込んであり、所々藁が風化して窪みになっている所もありますが、それもまた味となって散策気分を盛り上げてくれます。
自然味あふれる栗の柱
芝が張られた草屋根も、間近で見ると雰囲気がまた違いますね。
屋根の頂点にはマツの子供がピョンッと生えていました。成長するのが楽しみです。
軒の栗の木の柱は一本一本山から選んできたもので、表情の面白さに物凄いこだわりを感じました。
またメインショップに塗られた土壁は、社長やスタッフさん自らが協力して塗ったもので、プロとはまた一味違った味のある仕上がりになっています。
モミジとヤブラン
アジサイとオトメギボウシ
セキショウ
いよいよメインショップに入ると、山野草たちが出迎えてくれました。
まだ公開はされていませんが、敷地内には「たねや農藝 愛四季苑」という山野草のエリアがあり、スタッフさんが毎日管理しているそうです。
和菓子の木型のディスプレイ
一階にはたねやとクラブハリエのお菓子や、パン屋さんが入っています。
自然を楽しんだ後はベンチに座って舌鼓を打つのもまた一興です。
天井に貼られた無数の炭
二階にはカフェがあるので行ってみることに。
階段を上がるときどうしても気になるのが天井に貼られた黒い物体。よく見ると炭のようです。
これも一つ一つスタッフさんたちが協力して貼ったそうで、凹凸をつくることで音の反響を抑える効果があります。
炭は昔から日本庭園の雨落ちにも水を清めるという意味合いで使われてきましたし、脱臭効果も期待できそうですね。
なにより見ていておもしろいです。
シラカシやクスノキの苔山
カフェでは焼きたてのバームクーヘンとコーヒー・紅茶を楽しむことができます。
机の上ではまたもや苔と植物たちが出迎えてくれました。
ちなみに帰りがけには一階のできたて工房でどらソフトをいただきました。
自然とお菓子を一緒に楽しめるラ コリーナにぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
行ってみた感想
カフェにあった実生のシラカシやクスノキはなんとスタッフの皆さんや地域の方々が数年前からドングリを拾って大事に育ててきたものだそうです。
あの苔山だけでなく、ラ コリーナの園内にはドングリから育ててきた植物が皆さんの手で1万本以上も植えられ、やがては10万本を植え森をつくる計画だそうです。
それも樹種はなんでもいいという訳でなく、近くの八幡山の樹木の分布を調査し同じ樹種の割合になるよう植えています。
これってめちゃくちゃすごくないですか!?
お菓子づくりのために水田や農園をつくり、原材料を見る眼を養う。
ここまでする企業ってあります?
半端な覚悟じゃできません。
徹底的に自然に、人に、環境に根ざした信念がなきゃできません。
菓子屋だからといって菓子づくりだけに専念するのではなく、それを取り巻く原料、お店、景観、地域との繋がり全てに全力で取り組んでいく。
そうしてできたお菓子が不味いわけがありません。
というか美味しいとか不味いとかそういうのを超越して、愛です。愛が生まれました。
私はもう、たねやグループのファンに成らざるを得ません。
このような近江商人の「三方よし」を地で行ってる素晴らしい企業が増えていけば、社会や地球環境も少しずつ良くなっていくのかなと希望がもてました。
ラ コリーナ近江八幡は今もなお進化中で、今月15日にはカステラショップが、21日にはコンテナショップがOPENします。
果たしてどんなお菓子と建築なのか、そして長い将来どんな森と環境になっていくのか、私は楽しみで仕方がないです。
記事・・・飛田亮