2016/01/12

庭師とめぐる庭めぐり〜万博記念公園・日本庭園編その2〜

万博記念公園編もこれにて完結です。

前回に引き続き、公園内の日本庭園を巡っていきます。

↓前回↓

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前回は園内にある茶屋に辿りついたところで終わったので、今回は茶屋のちょっとした庭から見ていきます。

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前庭にあったこちらの竹、ちょっと変わった感じがしませんか?

細い幹に注目してください。竹なのに黒いんです。

名前はクロチク。そのまんまです。

ちょっとお洒落な感じがしてかっこいいですよね。

よくお店の入口に飾ってあるのを見かけるので、ご存知の方も多いかと思います。

中国原産で、ハチクの変種と言われています。

このクロチクで作る竹垣も、風情があって中々かっこいいんです。

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この御簾垣(みすがき)風のクロチクの扉は以前会社でつくったものですが、和洋問わず幅広く使える素材だと思います。

ちなみに御簾垣とは横使いの丸竹を柱で挟んだ竹垣のことをいいます。

すだれの竹垣バージョン?みたいな感じです。

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少し脱線しましたが、お次の竹は幹が黄金色をしています。

名前はトウチク別名「大名竹(ダイミョウチク)」とも言われています。

意外と竹にも色々な種類があって、これと似たようなものだとナリヒラダケやオウゴンチク、キンメイチクやギンメイチクなどややこしいものもたくさんあります。

ただ、トウチクの見分けるポイントはこの仕立て方にあります。

節と節との節間が長く、各節から3本以上の枝が生え、その枝を短く切り詰めると写真のようなリズムのいい房状に仕上がるのが特徴です。

これを「大名仕立て」といいます。

こちらも割とポピュラーな竹なので、ご存知の方も多いかと思います。

続いては足元に注目してみましょう・・・

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大きく分けて2箇所、アプローチに石張りがされていました。

使われている石は「鉄平石」

薄くて平らな石ですが、人工的に切り出されたものではなく、「板状節理」の性質をもつ岩を剥離させて造園や建築の材料として使われます。

↓節理については前回のこちらの記事をどうぞ↓

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この前回の記事で石張りについても少し触れたので、今回のケースに当てはめてみましょう。

1枚目の写真は、目地が十字に交差する四つ目地などの「いも目地」は見られないにしろ、目地幅が不均一だったり、大きな石を多用しすぎていて全体のバランスが少し不安定な感じがします。

2枚目の写真は全体的に四角形の石を多用しているせいか、至る所に四つ目地や通り目地が目立ってしまっています。

そんなの見る人なんていないからいいじゃん!と思われるかもしれませんが、だからこそ徹底的にこだわるのです。

普段通いなれている道でも、ふと立ち止まって見てみることで隠れた美しさや誰かのこだわりを発見できるかもしれません。

ぜひ庭園めぐりのときだけでも、時間を忘れて足元までじっくり観察してみてください。きっとなにか新しい発見が待っていると思います。

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さて、茶屋を離れて竹林にやってきました。

竹林といっても竹藪のようにもっさりとしたものではなく、涼やかな印象の竹林で見ていてとても心地よかったです。

木漏れ日ならぬ竹漏れ日も降り注ぎ、なにやら神様でもでてきそうな神秘的な雰囲気を

楽しみながら歩いていると・・・

https://www.instagram.com/p/_isID9RZ6K/

とっても神秘的な写真が撮れました!

インスタグラムに投稿したところ、もののけ姫やらかぐや姫やら、韓国の女の子には竹の妖怪だと怖がられたり皆さんの反応が面白かったです。

それにしてもこの樹形、滅茶苦茶きれいですよね。

この木の名前はイヌビワ。クワ科イチジク属です。

名前にビワとは付きますがイチジクの仲間です。

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イヌビワの花嚢(かのう)

果実のように見えるのは、実ではなく花嚢と呼ばれる袋だって知っていましたか?

袋の中には無数の花が咲き、そしてたくさんの小さな実ができます。

イチジクは漢字で「無花果」とかきますが、花は袋の中で咲いているんですね。摩訶不思議な植物です。

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ツツジもちょくちょく咲いていました。

上の写真がモチツツジ、下のがミツバツツジです。

花のない時期だけに、たった一輪でも目立っていました。

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ぐるっと一周まわって、最後に現代庭園エリアにやってきました。

園内を流れる水はめぐりめぐってこのエリアに流れつくようになっているようで、人類の進歩と時の流れを表しているようです。

未来を象徴する新たな試みとして、使われている石は全て四角い切り石を使っています。

この庭園がつくられたのが1970年。

この時代、丁度アメリカでは最小限のシンプルさを重んじるミニマリズムが流行っていたのでその影響を受けたのだと思います。

確かに日本には古来より「をかし」や「もののあはれ」、禅や侘び寂びなどミニマリズムと通じるものがあります。

ですがせっかく世界に日本の美を披露する場を用意したからには、ミニマルアートチックなもので世界基準に合わせるのではなく、あくまでも日本の伝統美の中で新境地を体現して欲しかったなぁなんて思いました。ちょっと偉そうですみません。

以上、万博記念公園編でした。

最後におもしろいツバキの花を発見したので載せておきます。

日本庭園を訪れた際はぜひ探してみてください。

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記事・・・飛田亮

 

投稿者: GardenPorter

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